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【何がいいの? 悪影響は?】クルマのホイールを換えるとどうなる? 利点と短所 | 自動車情報誌「ベストカー」 - ベストカーWeb

 ひとことでクルマのホイールといっても、スチール、アルミ合金、マグネシウム合金などの材質、製法についてもアルミホイールでは鍛造、鋳造などがあり、多種多様だ。

 新車で買った際に装着されているホイールを交換した場合、どんなメリットがあるのだろうか? 

 また軽量ホイールを装着した場合の意外な問題点も含めて、モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。

文/岩尾信哉
写真/ベストカーWeb編集部 BBSジャパン ENKEI WEDS RAYS

【画像ギャラリー】社外製軽量アルミホイールを純正装着しているクルマ


軽さと強度の確保が大事

VAB型WRX STIタイプSの特別仕様車「EJ20ファイナルエディション」
EJ20ファイナルエディションにはゴールドのBBS製8.5J×19インチ鍛造アルミホイール+245/35R19タイヤが装着されている
アルミとの比重が3分の2で、単位重量あたりの強度にも優れたマグネシウム素材を採用した、世界初のマグネシウム鍛造ホイールとなるBBS製FZ-MG。高度な熱処理による腐蝕対策、応力分散性に優れた10スポークの採用などBBSの最新技術が投入されている
ポルシェは2017年8月、自動車メーカーとしては世界初となるブレイデッド(編む)カーボンファイバー製の軽量ホイールを発表した。標準のアロイホイールより約8.5kg軽量(20%の軽量化に相当)であるうえに、強度は20%アップ。2018年の初頭から、フロント9 J x 20、リア11.5 J x 20が911ターボSエクスクルーシブシリーズのオプションとして用意されている。本国価格は4本セットで1万5232ユーロ、日本円で約198万円! ポルシェはこのホイールを生産するために社外のメーカーに頼まず、自社生産工場まで作ってしまった

 ホイールに使われる素材は、スチール(鋼材)、アルミニウム/マグネシウム合金などが一般的だ。

 カーボン(CFRP:炭素繊維強化プラスチック)などもあるが、コスト面を含めて高級スポーツカーでの採用例は見られても、モータースポーツ用の競技車両での利用が中心といえる。

 また、BBSでは世界で唯一、航空機用金属として知られる超超ジュラルミンを素材にした軽さと強度、高い耐久性とをバランスさせた超軽量5クロススポークをラインナップしている。

 自動車用ホイール用の素材として重要となる強度と質量(軽さ)に関しては、質量のほうがわかりやすく、指標として比重が持ち出されることが多い。

 1cc(1cm3)の水の重さと比較した物質の重量比(kg/cm3)」というのが比重の定義だが、具体的には鉄:7.87、アルミニウム:2.70、マグネシウム:1.74と、スチールに対して、アルミニウムが約1/3、マグネシウムが約1/5と圧倒的に軽いことがわかる。

 鉄の耐久性に関わる強度は、アルミニウム/マグネシウム合金に比べて重さを抜きにして考えれば絶大で、加工性の高さなどスチール製ホイールのメリットは充分にある。

 一方、重量と強さを合わせて考えるうえでの指標として「比強度」(引張強さ÷質量密度)があり、一般的なスチールに比べれば、アルミニウム合金やマグネシウム合金は約4~5倍になるとされ、CFRPについては約8倍と圧倒的な性能を誇る。

鍛造アルミホイールは鋳造と比べて何がいいのか?

BBS製の鍛造アルミホイールR1-A。国内最高峰のレース、SUPER GTの実戦で投入されているホイールと、同一の思想で、同一の造形でつくられた究極のレース仕様
アルミホイールの製造法は鋳造と鍛造がある。鍛造は日本刀も同様だが金属を熱し、圧力をかけて鍛えながら成型していく。一般的な金属の製造法である鋳型に熱したアルミを溶かし冷却した後、型から外す鋳造と比べると鍛造は大量生産に向かない。BBSアルミホイールの場合、最大9000トンのプレス機を持ち、ビレットと呼ばれるアルミ素材を約450°前後に加熱し、1平方cmあたり4トン以上の圧力を金型に押しつけ成型を行う。空気の孔ができず、高い強度が得られるというメリットがある

 クルマ好きならば、アルミホイールの製造方法が、鋳造よりも鍛造のほうがいいと聞いたことがあるだろう。

 鋳造は溶融させたアルミニウム合金を鋳型に流し込み、そのまま冷却して固める手法を採る。

 鍛造は同様に溶かしたアルミ合金を鋳型に流し込んだうえで、高圧をかけて成形・製造するということになる(上記写真参照)。

 鍛造製品が鋳造より性能面で優れるのは材料強度が高いことだ。

 「一般的に塑性変形域(加えた力を取り除いても変形が残る領域)に至る強度(=耐力)、破壊に至る強度(=引張り強さ)に優れる」(エンケイ資料から抜粋)とされ、圧力をかけて組成を変える(日本刀の鍛冶仕事を思い出してほしい)ことで鋳造よりも軽量かつ強靱な特性が得られ、荷重に対する強さ(変形しにくさともいえる)が増すということだ。

 製法に関して、乗り心地に関してアルミホイールを製造するうえで見逃せない要素として、スムーズにホイールが回転する指標となる高い「真円度」を実現するという課題もある。

 真円度が低ければホイールから振動などを生み出す原因となるため、製造時に高い精度が要求される。

 アフターマーケット品などを装着する際にバランス取りが細かく必要になるのは、個々の製品の真円度を高めるための処置といえる。

性能と価格の兼ね合いを見る

 スチールホイール(+ホイールキャプ)、アルミホイールの価格差について、純正品の価格については基本的に公表されていないケースが多いので、アルミホイールメーカーが製造している、アクアなどのコンパクトカーに設定された15インチホイールとクラウンなどに採用されている18インチホイールを比較してみることにする。

 3品はすべて1ピース構造だが、TE37のみ鍛造、ほかは鋳造品となる。それぞれ異なるデザイン/仕様が存在するため(TE37:6スポーク、PF07:7スポーク、LEONIS NAVIA:マルチスポーク)、厳密に比較することが難しいことをご了解いただきたい。

 ぞれぞれの製品名、重量(kg)、1本あたりの税抜き価格を掲載してみた。

●15インチホイール/5.5J、PF07のみ6J、タイヤサイズ:185/60R15)の場合
・RAYS VOLK RACING TE37 SONIC/4.45kg/4万3000円
・ENKEI PF07/6.6kg/2万8000円
・WEDS LEONIS NAVIA 05/5.46kg/2万8500円

RAYS VOLK RACING TE37 SONIC。スポークのワイド化に加え設置部をリム側に上げることで、強度・剛性を強化し、ハイパワー化に対応する操縦安定性を確保
ENKEI PF07。高速走行時の直進安定性やコーナリングの安定性を重視した特性
WEDS LEONIS NAVIA 05。リム成型技術AMF製法により、鍛造ホイールにも匹敵する優れた材料強度を実現。さらにリムの薄肉化により大幅な軽量化にも成功した

●18インチホイール(8J、TE37 SLのみ8.5J、タイヤサイズ:225/45R18)の場合
・RAYS VOLK RACING TE37 SL/7.85kg/7万円
・ENKEI PF07/9.8kg~/4万円
・WEDS LEONIS NAVIA 05/9.04kg/4万3500円

 今回選択した3社の3製品を見ると、コンセプトを「スポーツ」、「スタンダード」、「ファッション」と捉えることもできそうだ。

 RAYSとENKEIはモータースポーツへの製品供給で得られた設計製造技術を前面に押し出す一方、WEDSは同社の製品を「スタイリッシュホイール」と呼ぶようにカスタマイズを中心に商品を展開している。

 日本製であることを強く主張するRAYSの価格が他の2社から突出しているのは、鍛造品として、設計開発などのコストとともに、“メイドインジャパン”のこだわりが生み出していることが想像される。

 対してENKEIは広く海外にも生産施設を展開しており、手頃な価格で幅広く高性能な製品をマーケットに供給することを主眼としており、それぞれの主張の善し悪しを問えるものではないだろう。

 RAYSの製品がほかの2つのメーカーに対して、鍛造品とすることで質量にして約2割の軽量化を実現、価格が1.5倍ほどに設定していることには、単体での“1kgの軽量化”を購入する側がどう評価、納得できるかということだ。

 一方で、カスタマイズカー向け製品を開発しているWEDSが、他の製品に関しても複雑な形状のスポークデザインを提案していることを見れば、こだわりの方向性が違うことは明らかだ。

純正ホイールは安価で当然

大抵の場合、廉価グレードにスチールホイール+ホイールキャップが装着される。写真は新型フィットの15インチスチールホイール+ホイールキャップ。奥に丸い穴の開いたスチールホイールが少し見えているのがわかるだろうか

 純正ホイールについては、自動車メーカーはほぼタイヤ込みの価格しか明らかにしていないが、新車から外されて販売されている中古品などの価格から、ある程度までは類推できるので、参考値として捉えていただきたい。

 スチールホイール(1本)の純正品については、15インチは5000円から1万円ほど、18インチのアルミホイールでは1万~2万円程度のようだ(純正タイヤ価格は約2000~5000円を想定)。

 一方で、アフターマーケット品のアルミホイールに関しては、15インチは3万~4万円、18インチは4万~6万円と、価格はまったく異なる。

 この差はどのようにして生まれるのかといえば、答えは至ってシンプル、販売される「数」の問題だ。

 たとえば、2020年2月の販売台数はアクアが8433台、クラウンが2281台だったが、その数だけ純正装着ホイールが「売れている」ことになるから、大量生産による量産効果が得られるのでコストを充分に抑えられる。

 このように、生産規模がまったく異なることから生じる価格差は、純正品とアフターマーケット品を直接比較できるようなものではない。

 先のようにコストや価格は自動車メーカーにとって機密事項になっているので、あくまで想像の域を出ない。

 対して、ホイールメーカーが独自に手がけるアフターマーケット品は、製品ごとに限られた生産数の中で利益を生み出すべく、商品性などを細かく検討したうえでマーケットに受け入れられるような価格を設定しなければならない。

 結果として自動車メーカーの純正品に比べれば、“強い個性”を打ち出すための手間をかける度合いが増すため、販売価格が高くなることは否めないだろう。

軽量化で期待できるメリット

あらゆる部位において軽量化が図られているGT-R NISMO 2020年モデル
GT-R NISMO専用のRAYS製20インチ鍛造アルミホイールは、合計で100g軽量化しながら剛性を高めた新たな9スポークデザインを採用。リムにはダイヤモンドカットが施され、白と赤のNISMOロゴも配されている

 それでは、タイヤとの組み合わせで性能が変わることを念頭に置いた上で、ホイールの軽量化のメリットとデメリットについて考えてみよう。

 クルマの足元を支えるホイールとタイヤについてよく耳にする話として、「バネ下1kgの軽量化はバネ上(ボディなど)10kgの軽量化に相当する」という文言がある。

 これはモータースポーツの経験則から生まれたようで、おそらく「ホイール1本×1kg」の変化と類推して「4本総計4kgのバネ下質量の軽減」が「10kgの軽量化」に当たると解釈したほうがよいと思われるが、むろん「バネ下質量軽減」は軽んじてはならないテーマだ。

 では、より軽いアルミホイールを装着すると、具体的に車両の挙動の何が変わるのだろうか。

 日常的にクルマを走らせるうえで、一番わかりやすい効果を期待したいのは燃費の向上だろう。

 軽量化による効果としては、転がりやすさ(転がり抵抗の少なさ)が向上するということであり、転がり抵抗の少ないタイヤを組み合わせれば燃費向上の効果は増すはずだ。

 走りについては、軽量化によってステアリング・レスポンスの向上を狙えると言われている。

 バネ下質量が軽くなるとスプリングなどのサスペンションの動きが少なくなることから、コーナリングや加減速でのボディ全体の荷重移動がスムーズになり、拳動変化が少ない安定した走行が可能ということになる。

 むろん、タイヤのグリップ性能に関わることだから、タイヤの選択にも気を遣う必要がある。

 加減速での慣性モーメントの抑制という面でも、回転部分の外周(タイヤと組み合わされるリム部)が軽く設計されているほど少ない力で回転・停止ができるのでブレーキ性能の向上が期待できる。

 ただし燃費に比べて、シャシー性能に関わるこれらの多くは微細な領域での挙動変化だから、スポーツ走行などを除いて誰もが感じ取れるような明らかな効果があるとは言いにくく、日常的な話として成立するかどうかは難しいところだ。

2020年夏に発売予定のマイナーチェンジ版シビックタイプR。サンライトイエローIIのリミテッドエディションは国内限定200台。1本あたり2.5kg軽量化されたBBS製アルミ鍛造20インチホイール+245/30ZR20タイヤを装着
リミテッドエディションにはミシュランパイロットスポーツカップ2、タイプRの標準車にはコンチネンタルスポーツコンタクト6を装着

軽量ホイールを装着するとかえって乗り心地が悪化することも

軽量アルミホイールを装着し、バネ下の軽減を図ることは重要なのだが……

 前述のようにホイールの軽さが生み出す動的な効果として期待されるバネ下重量の軽減については「軽ければよい」のかといえば、実はそうではない。

 多くのユーザーがホイールを換えることで期待する変化は、やはり乗り心地ではないだろうか。

 足回りからステアリングに伝わる振動をいかに抑えるかは、クルマ自体の性能や商品性の評価に関わるから、自動車メーカーの純正タイヤでも耐久性とともに重要な設計要素でもある。

 但し書きが多くなり恐縮だが、純正ホイールをより軽量な社外品に換えれば即乗り心地が改善するというわけにはいかないことを心しておきたい。

 具体例を示しておくと、ホイールを軽く仕立てれば、路面への追従性が上がることが考えられる。

 とはいえ、路面からの細かい突き上げに敏感に反応して拾いやすくなり、乗り心地が悪くなったり、ロードノイズが増大することもあるのだ。

 そこで一部の高級車では大径ホイールをあえて過度な軽量化を施すことなく、タイヤの性能やダンパー/スプリングのセッティングに関して、バランスを採りつつ快適な乗り心地を確保している例もある。

選択幅は広いが、選ぶ際には慎重に!

 このように、ホイールの軽量化を実現するための設計やデザイン、さらにコストや価格といった様々なハードルがホイールの開発では立ちはだかる。

 耐久性を考えればスチールホイールの信頼性は絶大といえ、質量ではアルミ鋳造品などと変わらぬ場合もあるなど、どのような要素を重視するかによって選択肢は変わってくる。

 アフターマーケット品では商品性、言い換えれば見た目のファッション性(平たく言えば格好の良さ)の善し悪しは好みの問題でもあり、使い方次第といってしまえばそれまでだが、コストパフォーマンスを含めて、ホイールはあくまで慎重に選んでほしい。 

 自動車メーカーが車両に装着してテストを繰り返していることを考えれば、交換によってバランスが崩れてしまい、乗り心地など足回りについてセッティングの“迷路”にはまり込んでしまうことのないようにご注意を。

【画像ギャラリー】社外製軽量アルミホイールを純正装着しているクルマ

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