石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は2日、原油の追加増産で合意した。7月の増産幅を日量64万8千バレルとし、従来の43万2千バレルから拡大する。ロシアの生産がウクライナ侵攻による制裁で落ち込んでいるのを部分的に補い、増産加速を求める米国に一定の配慮を示した。
増産余力を持つサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は対ロ協調を優先し、大幅増産に応じてこなかった。サウジが重い腰を上げたのは、インフレに悩む米国へのメッセージとなる。ジャンピエール米大統領報道官は2日、「新たな市場環境に基づき、供給を日量20万バレル以上増やすとの重要な決定を歓迎する」とコメントした。
米メディアによると、6月下旬にバイデン米大統領が中東を歴訪する計画があり、これに先立ちホワイトハウス高官らが最近サウジを訪れていた。米国では中間選挙が11月に控えており、有権者が嫌うガソリン高を放置するわけにはいかない。
RBCキャピタル・マーケッツのヘリマ・クロフト氏は2日のOPECプラス閣僚協議に先立ち「米国がサウジの安全保障上の懸念を解消すれば、取引が成立する可能性がある」と指摘していた。サウジはイエメンの親イラン勢力との戦いで米国の支援が弱いと感じ、米国がイラン核合意の再建を目指していることも警戒する。これらの問題で米国から明確な見返りがあれば、一定の原油増産で応えるとの見立てだ。
もっともロシア1カ国の生産減を完全には穴埋めできない。国際エネルギー機関(IEA)によると、4月のロシアの生産量は計画に対し日量134万バレルの未達だった。欧州連合(EU)が5月末に合意したロシア産石油の禁輸など米欧日の制裁が続く限り、回復は見込みにくい。ほかにもアフリカの産油国なども生産目標割れが続いている。
ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物はOPECプラスの声明発表後、一時1バレル116ドル台と前日比1%上昇した。追加増産の観測で3%安い111㌦台まで下落してい�たが、増産の規模が限られるとの見方から買い戻された。
OPECは、原油の生産調整で手を組んできたロシアとの関係も維持する構えだ。OPECの産油量のシェアは世界の3割台だが、ロシアを加えれば4割を超す。原油市場への影響力を維持するためにも「ロシアとの協調は簡単にはやめられない」(和光大学の岩間剛一教授)との見方が強い。
1日、サウジ、UAEを含むアラビア半島の6カ国はロシアのラブロフ外相をサウジの首都に招き外相会談を開いた。インタファクス通信によると、ラブロフ氏は記者会見でOPECプラスの合意を会談で再確認したとし、「協力の原則は重要であり続ける」と強調した。
ただ3カ月を超えても終わりが見えないウクライナ侵攻の長期化は中東勢にも誤算だったはずだ。長びくほど、中東産油国はロシアから得るものが小さくなり、米国などからの風当たりは強まる。供給不足を放置すれば、国際的なカルテルとしての信用を損なう懸念もあった。
原油価格の急落を招くような大幅な増産は、どの産油国も望まない。米欧の対ロ制裁を側面支援し、ロシアを追い詰めるリスクもある。米ロを両てんびんにかける中東産油国のかじ取りは難しさを増している。
(カイロ=久門武史、蛭田和也)
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