食道、胃、大腸の壁は、粘膜や筋層が重なっている。病変が筋層に達していない早期がんの内視鏡手術では、粘膜と筋層の間にある「粘膜下層」と呼ばれる部位に薬液を注入し、病変部を浮き上がらせて切除する。
弾力がある消化器の壁に刺すため、局注針の先端部は角度が約30度と鋭利だ。一般的な局注針は、外経0・6ミリ、内径0・3ミリの筒状。先端が鋭角のため断面が長くなり、開口部は幅0・3ミリ、長さが1・2ミリになる。
粘膜と粘膜下層は厚さがそれぞれ1ミリ未満しかなく、針の刺し方が浅いと薬液が粘膜の表面に漏れるケースがある。この手術では青い薬液が使われるため、表面に漏れると一帯が青くなって病変部が見えにくくなる課題があった。
SESSAは、薬液を通す穴を先端近くでカーブさせ、針の側面に開口部を設ける構造を考案した。開口部は幅0・3ミリ、長さ0・6ミリで、薬液を注入する際、粘膜の表面に液が漏れ出すリスクを減らせるとしている。
SESSAは2014年4月に医療機器開発のナノ・グレインズ(諏訪市)など5社で発足。大阪医科大など医療現場のニーズを受けて同年から新たな局注針の開発を始め、同社の技術者が新たな構造を考案して特許を出願した。針の加工は19年1月にSESSAに加わった金属部品加工のプロポックス(京都市)が手掛けた。大阪医科大、関西大が針の性能や使い勝手を評価、検証している。
ナノ・グレインズによると、消化器の早期がんの内視鏡手術に使う局注針の世界市場規模は10億円ほど。同社の鈴木啓太医療事業本部長は「従来の針より手術がやりやすくなるとアピールし、商品化につなげたい」としている。
(6月6日)
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薬液ピンポイント 局注針 諏訪などの企業グループ、2大学と共同開発 - 信濃毎日新聞
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