小学館から半年に1度発行されるカジュアルファッションマガジン『Maybe!(メイビー)』。
創刊号となるvol.1「恋愛ってなんだ?」特集では「経験人数ファッション図鑑」を掲載するなど、大手出版社が刊行しているとは思えない攻めた企画が魅力で、創刊以来、出版業界では呼び声の高い雑誌です。
一見、ポップな若者向けのファッションカルチャー誌ですが、公式ホームページには「世の中の真実が読める!」という怪しげなキャッチコピーが......。
「『真実』はいつも想像の外にある」と語るMaybe! 編集長の小林由佳さんと、創刊からMaybe! に携わる漫画編集者の金城小百合さん。ヒットメーカーのお2人が持つ「思考の核」に迫ります!
人間、A面B面だけじゃない
──「はじめてのウラジオストク」特集で異例の重版がかかったお話を聞かせていただきましたが(前編リンク)、そもそもMaybe! ってどういう雑誌なんでしょう?
小林由佳編集長(以下、小林):年に2回刊行しているファッションカルチャー誌です。最新号の「ジョージアに行こう!」特集で8号目になりました。
──公式ホームページの「世の中の真実が読める!」というキャッチコピーが、ファッションカルチャー誌らしくなくて気になりました。
小林:今、みんなすごく真面目じゃないですか? 何を読んでも「でしょうね」みたいなことが書いてあって、予定調和に感じるというか。だから、「本当のことをちゃんと世に出したい」って気持ちでMaybe! を作りました。
──「本当のこと」とは......?
小林:例えば、vol.7に藤原ヒロシさんのインタビューがあるんですけど。ふつうに「今回このブランドとのコラボはどういう経緯で実現したんですか?」みたいな、それっぽい質問をしたら、おそらくそれっぽい回答をしてくださるじゃないですか。でも、ファッションデザイナーやミュージシャンだって、常にファッションや音楽のことだけを考えているわけではないはずで。
藤原ヒロシさんだって「コンビニのおにぎりなら塩むすびが好き。シンプルに塩の味がおいしい」とか、「ストパーちょっとかけてます」とか、そういう日常があって......なんだろう、それが真実っていうか。そこで「おにぎりとブランドの語り口がほぼ同じだ!」という発見があったりすると、読んでいて面白いですよね。
──そこなんですね(笑)。Maybe! は切り口がちょっとふざけてますよね。
小林:うーん......。ふざけてるつもりはないんですけど。おにぎりもブランドも同じような視点で見ている人なんだっていうのがわかって面白かった。そういうのは他のメディアがこぞって取りあげる「A面」だけの質問では表に出てこないから、Maybe! はB面中心の質問でいきたいなと。本当はみんなA面B面の表裏どころじゃなく、5個、10個、100個と多面的な自分を持ってる。それが真実だと思っているから、なるべく真実に迫るようにしたいです。
あと、テレ東の『青春高校3年C組』っていう番組が私とても好きで。この番組で初めて中井りかさん(NGT48)の、バラエティのスキルの高さを知りました。お笑い芸人さんたちに物怖じせず、ガンガン場を回していく姿を見て、こんなに面白くて安心感のあるアイドルいるんだ! って。
Maybe! vol.7「笑いが必要だ」特集号「中井りか(NGT48)と漫画家・清野とおるの謎解き赤羽・東十条ツアー」より
vol.7では漫画家の清野とおるさんと赤羽周辺を探索してもらいました。道中、清野さんが無理難題を中井さんにふっかけるんですけど、やっぱり物怖じしないで切り返してくれるから、めっちゃ面白い記事になってさすがでした。
金城小百合(以下、金城):あと、そういう取材に同行するとき、小林さんは率先して素を出すよね(笑)。
小林:そうだね。素でしゃべってる編集につられて、みんなもポロッと素を出してくれたらラッキーって思ってる。「こういう面があるんだ!」っていうのをどんどん皆さんこぼしてほしい(笑)。
どう受けとるか、ジャッジは読者にゆだねる
(写真上から)Maybe! vol.2「普通とは?」特集、Maybe! vol.6「学生時代」特集
──切り口というと、Maybe! って何かを分類する企画が多いですけど、そこで何かをジャッジしたり、ランキングをつけることはしないのが印象的で。「こういう人もいるし、ああいう人もいる」っていうのをたくさん紹介してくれますよね。
金城:そうですね。何かを並べて紹介するときにどっちが良いとか悪いとかは思ってないですね。
小林:vol.6「学生時代」特集でもそれは意識してます。スクールカーストの一軍じゃなくてもいいし、だからといって三軍だった人をアゲるわけでもなくて、「みんなそれぞれの学生時代を経て今がある」っていうのを見せたいと思いました。
Maybe! vol.1 「恋愛ってなんだ?」特集より
vol.1に、スタイリストさんの持ち込み企画で、経験人数ごとにファッションの傾向を解説した「経験人数ファッション図鑑」というページがあるんですけど。これも、やるからには、やっぱり真実に迫らないと面白くないなと思って。多摩川のバーベキュー場やフェスに出かけて100人くらいに「経験人数は何人ですか?」と聞いて回り、服装を記録させてもらいました。
──それはすごい取材ですね(笑)。
小林:ちゃんと調べてみるもので、なんとなく傾向が見えてきた(笑)。それをスタイリングに落とし込んでもらいました。
でも制作中、「『人数が少ないのはダサい』とか『遊んでるほうがカッコいい』という紹介の仕方は良くないよ」と注意されたことがあって。「どゆこと?」ってなりました。それが一般的な価値観なんですかね? 意外とまだまだ偏見のある世の中なんだなって思いました。
私は図鑑のつもりで作っているので、"図鑑"って、例えば「カブトムシよりも、チョウのほうがかわいいです」みたいに作り手の主観を押しつけることはしないじゃないですか。Maybe! も「結果こうなったけど、どう?」って見せて、あとは皆さんが好きなように読んでもらえればいいなと思って。
──なかなか反響が大きそうな企画ですが、感想が届いたりは?
金城:私が担当している漫画家さんは「こういうことで人を分けて、差別して!」って怒ってました。でも、1年くらい経ってから「あの企画でバカにされた気がしたのは、自分自身にそういう差別的な意識やコンプレックスあるからだったかも」って言ってくれて。わかってもらえたことはもちろんなんですけど、考えて続けてくれたことがすごく嬉しかったですね。
──ふざけた企画に見えて、意外と深いところに刺さりますね......。Maybe! のメインターゲットは20代女性になるのでしょうか?
金城:20代女性が多いかもしれないけど、ぜんぜん年齢では分けられないよね?
小林:そうだね。10代でも20代でも60代でもコンサバな人はコンサバだし、年齢っていうより「趣向」で区切るのが正しいんだろうなって気がしています。
金城:自分自身が中高生の頃からそんなに変わったとは思えないし。
小林:私はボーダーをよく着るけど、ピカソもボーダー着てたしね。
「わかる人にだけわかればいい」はつまらない
──Maybe! は持ち込み企画を積極的に採用されているそうですが、重視していることはなんですか?
小林:基本的には、今までに見たことがなくて面白いかどうかです。なので、どこかで既視感がある企画はやめるようにしています。それと、変なバイアスがかかっていないこと。例えば「読者が真似しても大丈夫」って思えないことは載せられない。振り返ると自分自身も学生の頃は「雑誌の情報は正しいもの」って無意識に思っちゃってた。そういう意味で、若者に良くない影響を与えそうなものはやめています。
そこさえ気をつければ、雑誌は書籍よりも読者の間口が広いから、切り取り方次第では、たくさんの層の人たちに届けられるのが面白いですね。
金城:そうだね。ファッションに詳しくない人にも、意外な角度からファッションを取り上げることで、ちょっと好きになってもらえたら素敵だなと思う。
ふだん、漫画家さんとストーリーを作るときも、「伝えたいこと」の純度を高めてエッジーにすることは簡単だけど、もっとマスに届くようにしたいっていうのは、編集者としてベースになってる気がする。
小林:「できるだけ多くの人に伝えたい」って気持ちがあるから、「自分がやりたいことがやれればいい」とか、「わかる人にだけわかればいい」になっちゃうと途端につまんないよね。まだ流行っていないけど、私たちが本当に面白いと思っていて、みんなにも知ってほしいことを広めたい。
金城:面白さの純度が一番高いかたちで人に響くものっていうのがMaybe!の落としどころだよね。そのためには、まず自分たちが「面白い」って確信を持ってやるのが一番いい。
小林:ほんとそれ!
撮影協力:ミカフェート 一ツ橋店
小林さんから次々とこぼれる「企画は通すもの」「編集長の仕事は責任をとること」「答えがすぐわかるものは真実じゃない」など力強いセリフに痺れました。次号は初夏頃刊行予定。作り手の想像も超える雑誌Maybe! 発売が楽しみです!
【書籍情報】
雑誌『Maybe!』(小学館)
好奇心旺盛なカルチャー好きへ向けて、特集テーマを紐解いて発信する新しくてリアルなカジュアルファッションマガジン。年2回刊行。
毎号、豪華なラインナップのインタビューは必読。豪華作家陣(コナリミサト、まんきつ、今日マチ子、沖田×華)による漫画連載も。最新号「ジョージアに行こう!」特集(vol.8)発売中。バックナンバーもネット書店などで購入できます。最新情報は公式サイト、SNSから。
Twitter @Maybe_magazine
Instagram @maybe.magazine
【プロフィール】
小林由佳(こばやし・ゆか)(写真左)
山と溪谷社を経て、2007年小学館に入社。「図鑑NEO」編集部に所属しながら、Maybe!編集長を務める。主な担当書籍は『あたらしいみかんのむきかた』『おじさん図鑑』『花と葉で見わける野草』『宇宙探検えほん』、小学館の図鑑NEO『花』『きのこ』『新版植物』(小学館)、『おとなのおりがみ』(山と溪谷社)。
金城小百合(きんじょう・さゆり)(写真右)
秋田書店を経て、2014年に小学館に入社。「週刊ビッグコミックスピリッツ」編集部所属。Maybe!では主に漫画連載を担当する。Maybe!での連載をまとめた『前略、前進の君』(作・鳥飼茜)が発売中。主な担当書籍は『あげくの果てのカノン』『プリンセスメゾン』(小学館)、『花のズボラ飯』『cocoon』(秋田書店)。現在『週刊スピリッツ』で担当作品『往生際の意味を知れ!』『サターンリターン』『恋と国会』が連載中。
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March 09, 2020 at 07:04PM
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