人生で初めてスーツを購入したのが、就活用のスーツだったという人は多いでしょう。年月が経過して自分の子どもが就職活動をするとき、いきなり高価なビジネススーツを買わせるのではなく、まずは一般的な就活スーツからキャリアをスタートさせるのが良い方法。
この記事では、就活で着るスーツについて、一般的なビジネススーツとの違いを踏まえ、選び方のポイントなどを解説します。
就活スーツとは?
就活スーツとは、一般的に「リクルートスーツ」とも言われます。就活で着るスーツは黒や濃紺、ダークグレーなど濃い色みの無地のものが基本となっています。近年では過半数の就活生が、黒の就活スーツを選ぶとされています。地味で無個性な就活スーツがポピュラーになったのは、ここ20~30年のこと。一説には、百貨店のスーツ売り場が「就活では、シンプルな就活用のスーツを着ましょう」と、キャンペーンをして売りはじめたとも言われているようです。
20~30年前といえば、ちょうどバブル経済がはじけたころ。そこから、就活用のスーツは家庭ごとの経済格差が目立たなく、いざというときの冠婚葬祭にも着て行けるような黒色のものが一気に普及したという説もあります。
仮説はさておいて、就活スーツはどんな業界へ就活に向かうのかを問わない、ベーシックでシンプルかつ地味なものがほとんどです。特に歴史のある大企業や、公務員などのお堅い業種に就職することを目指す就活生は、無個性であるほうが無難だと言えます。しかし、個性がないことがよしとされるのも、目指している業界によるものです。
例えばですが、都心のヘアサロンに美容師として就職したい就活生が、ごく普通の地味な就活スーツを着て面接に行くことはあまりないでしょう。ヘアサロンやアパレル業界などでは「スーツではなく、私服で面接に来てください」と伝えられる場合さえあるようです。それぞれの目指す業界に合わせて、無難な就活スーツを着ていくのか、もう少し自分という個性を出していくのかを見極めるべき必要があります。ただし、あくまで就活生はオーソドックスな就活スーツを着るのが、いちばん印象が良く爽やかに見えるというのが一般的とされています。
就活スーツとビジネススーツはどう違う?
就活スーツとビジネススーツの違いを、明確に理解しているという就活生のほうが少数派でしょう。まず就活スーツは、就職活動をするある一定の期間だけしか着用することができません。そのためある意味では、消耗品だとも言えます。対するビジネススーツは、それよりももっと長い年月持たせなければならないものなので、耐久性や質の良さなども求められます。
就活スーツはビジネススーツと比べると、価格の安い化繊の生地を使って作られている場合が多いです。そのため通気性に乏しく蒸れやすかったり、座っただけでシワがついてよれてしまったりすることもあります。就活スーツでもある程度のお金を出せば、少しランクのいい生地のものを買うことができます。シワシワの就活スーツでだらしないように見られたくない人や、営業職など多くの人と会う職種を目指す人は、見る人に与える印象を重視して少しでもいい素材の就活スーツを選んだほうがベターでしょう。
また、就活スーツとビジネススーツでは、着ているときの快適性も異なります。安価な就活スーツはご想像のとおり、着心地が悪いものです。ビジネススーツのほうが通気性や機能面などにおいて、より快適に過ごせるように作られていることは間違いありません。そこで最近では、就活用に黒や濃紺のビジネススーツを購入する就活生も増えてきているよう。長い目で見れば就活時にビジネススーツを買っておけば、就職した後もそのまま着ることができるので、コストパフォーマンスが高いと言えるかもしれません。
しかし、まとまった収入がないのに、値段の張るビジネススーツを買うのは難しいという就活生もたくさんいることでしょう。そして就活が終わって会社に入っても、しばらくの間は就活スーツを着て出勤するという人もいます。働いて給料が入るようになってから、少しずつビジネススーツを買い足していくという方法です。このやり方も、自分の身の丈に合った生活をするという意味合いにおいて、決して悪いことではありません。むしろ、親のお金で買ってもらった高いスーツを着ているくらいなら、自分のアルバイト代で就活スーツを用意して大事に使うようにしたほうが、正常な金銭感覚を養うためにはいいようにも思えます。
メンズ就活スーツの選び方
それでは、メンズの就活スーツはどんな点に着目して選べばいいのかを、詳しく解説していきます。就活スーツは基本的に、1着ないし2着を短期間で着まわすものなので、いい加減に決めてしまうのは絶対におすすめできません。
色
一般的な就活スーツは黒色や濃紺、またはダークグレーなどになります。そのなかでも、一番人気である黒色の就活スーツを選ぶ就活生が大半です。人気の理由は、黒ならばどんなネクタイにも合わせやすく、履歴書用の証明写真を撮る際にも輪郭がくっきりして写真映えしやすいからだと言われています。しかし、似合う色は人それぞれ違います。黒の就活スーツよりも、ダークグレーの就活スーツのほうが、顔色がより快活そうに見えるという人もいるのです。自分がいちばん引き立ち、爽やかそうに見える色選びをするのも大切なことです。
また、黒の就活スーツを着た集団のなかで、ひと味違った濃紺やダークグレーの就活スーツを着ていると、ちょっと注目を引くことにもつながります。目立つことがいいほうに出るか、悪いほうに転がるかも、採用試験を受ける業界や採用担当者によって変わってくるため、慎重に考えるようにしてください。
そして、近年では黒のスーツを着たビジネスマンもよく見受けられますが、そもそもブラックスーツは冠婚葬祭用として日本人が作ったもの。そのため、欧米ではビジネスシーンでブラックスーツを着ることはまずないということも、社会人になる前に知識として覚えておいたほうが良さそうです。
デザイン
就活スーツもビジネススーツも、デザインにおいては大差がないと思っている就活生は多いでしょう。しかし就活スーツは、あくまでもベーシックなデザインで量産されているもの。一方ビジネススーツは一見すると無地の濃紺のように見えたとしても、よく見てみると生地の織りが変わっていたり、ストライプやチェックの模様がさりげなく入っていたりします。つまり、就活スーツよりもファッション性があり、自分の好みをデザインに反映させることができるのです。就活スーツは、やはり無地のものがベストチョイスになります。
就活スーツの基本的なデザインは、2つボタンタイプのシングルスーツです。3つボタンのものでも就活スーツとしてマナー違反にはなりませんが、いまの主流のデザインからは少し離れてしまいます。ダブルのスーツは言うまでもなく年配の人が着るようなデザインで、貫禄が出てしまうので、何よりもフレッシュさが求められる就活スーツとしてはふさわしくありません。
サイズ
就活スーツ選びで重要視してほしいのが、サイズ感になります。学生服を着ていたことがあるという人は、ワンサイズ大きめのものを購入することが割と普通だったはずです。その理由は、学生服を着る時期は成長期なので、身長や手足の長さが伸びることが予想できるから。成長に合わせて何度も学生服を買い直すのは、親にとって経済的負担になるからです。
しかし就活生ともなると、就職活動をしている短い期間に、身長が数センチも伸びたりはしないはずです。ジャケットの袖の長さやパンツの裾の長さには、スーツを着るうえでの決まりごとがあります。この決まりを守って着ると見映えがよくなるので、自分の手足の長さに合わせて、お直しや裾上げをしてもらうようにしましょう。袖などが長すぎたりすると、だらしない印象となってしまいます。
身長のほうは伸びないにしても、就活をしているとストレスや疲労から食生活や睡眠が乱れ、急激に体重が増えたり逆に痩せてしまったりする人がいます。その懸念があっても、就活スーツのサイズは、ジャストサイズを選んでおくことがベスト。パンツのベルト部分がきつくなってきたり、ブカブカになってきたりしないように、就活の間くらいは体形を維持するように自分自身で気をつけることが必要になります。社会人ともなると自己管理という意味において、健康的な体形をキープする努力も必要なことなのです。
就活スーツはジャストサイズがいいと書きましたが、最近のビジネススーツの主流はもう少しスリムで、身体のラインにフィットするものです。せっかくなら、はやっているほうを選びたいと考える就活生もいるはずです。しかし、あまりに流行を追ったようなサイズ感の就活スーツを着ていると、採用担当者によっては「チャラチャラしていそうな学生だな」と悪い印象を持たれる場合もあります。そういった危険性がないのが、一般的なジャストサイズの就活スーツです。名が通っているスーツのお店に行くと、店員さんにきちんとサイズを見てもらえます。不適当なサイズのスーツを買ってしまうことのないように、十分に気をつけてください。
とはいえ、クリエイティブ職やアパレル業界を目指しているような就活生は、少しくらいは流行のサイズ感を採り入れた就活スーツ選びがいい結果に結びつく場合もあります。しかしあくまでも就活は、爽やかに誠実そうに見られることが最重要です。基本はジャストサイズで、決して大きめのものは選ばないように注意しましょう。オーバーサイズの就活スーツは見た目の印象がだらしなく、悪目立ちしてしまいます。
値段
就活スーツは、就活生のアルバイト代やいままでの貯金でも購入できる、安価なものが中心です。安いものでは1万円以内で、いろいろな種類から選ぶことができます。もう少しこだわりたいという場合でも、2万~3万円程度のもので十分です。就活スーツは大量生産されているものなので、就活生に買いやすいお手頃な価格帯に抑えられているのです。
就職してから着るビジネススーツの価格は、1着で数万円します。それで格段に品質が良くなり長く着ることが可能なのであればと、前述したように就活においてもビジネススーツを着用する人もいます。しかし就活生を無難に見せるのは、やはり就活スーツです。どちらが正しいのかは判断の難しいところですが、目指している業界や社風を鑑みて、先々で「失敗した」と後悔をしないように、最善のスーツを慎重に選ぶようにしてください。
シャツ・ネクタイ・靴の選び方
就活スーツを買うときにはシャツやネクタイ、靴などの小物類も一緒に購入しておきましょう。スーツを着るときには、絶対に必要になるものです。初めてのスーツで、どうしてもコーディネートが難しいという人は、信頼できるスーツ店の店員さんに相談してみてください。
シャツ
就活スーツに合わせるシャツは、白無地のものになります。サックスブルーやイエローベージュなどのカラードシャツは若々しく、黒や濃紺のスーツにも合いますが、就活という場では不適切。襟の形は「レギュラーカラー」または「ワイドカラー」を選びましょう。レギュラーカラーとは最も一般的な襟の形で、細身から普通体型の人に似合います。ワイドカラーというのは左右の襟の開きが大きめな形になり、大柄な人やガッチリ体型の人におすすめです。
就活用のシャツは着るたびに洗濯をして、ピシッとアイロンをかけることが基本です。しかしひとり暮らしでアイロンを持っている就活生は、なかなかいないかもしれません。そういう人には「ノンアイロンシャツ」「形状記憶シャツ」などと呼ばれる、洗濯をした後アイロンがけの必要がないシャツを買っておくのがよいでしょう。ノンアイロンシャツとは、素材や織り方などが工夫されていて、アイロンをかけなくてもシワのない状態でそのまま着られる機能を持った、就活生にもうれしい便利なシャツのことです。
ネクタイ
同じ就活スーツとシャツの組み合わせでも、コーディネートするだけでガラリと印象を変えてくれるアイテムが、ネクタイです。ネクタイの色や柄の選び方によって、就活で最も大切なポイントとなる「あなたという人物の第一印象」を格上げしてくれる、重要な小物のひとつとなります。
濃紺のネクタイは誠実で知性的なイメージで、同時に清潔感も醸し出せます。面接時に採用担当者に好印象を与えるために、濃紺のネクタイは1本持っておくといいでしょう。そしてエンジ色のネクタイは、情熱的で活気に満ちあふれたイメージになります。集団面接など、強く自分を印象付けたいときに使える色です。社交性をアピールすることができるイエローのネクタイは、書類選考の際に大勢のなかから目にとめてもらいやすいので、履歴書用の証明写真にぴったりです。
ネクタイの柄は上記の色を基本に「無地」か「ストライプ柄」または「小紋(小さな模様が規則的に入っている)柄」など、オーソドックスなものを選ぶのがおすすめです。派手な柄物は、就活スーツには自己主張が強すぎます。
靴
最後に、靴についてです。多くの就活生を見ている採用担当者は、あなたの足元までくまなくチェックしているもの。就活スーツに合わせるのは黒の靴、この一択です。ひもで結ぶタイプの、フォーマルに見える靴を選びましょう。ブラウン系の靴は一見するとファッショナブルな印象ですがカジュアル寄りになり、就活には向きません。靴のデザインは「プレーントウ」または「ストレートチップ」のものが一般的です。プレーントウとは、名前のとおり足の甲の部分に縫い目のないもの。ストレートチップは、甲の部分に横一直線のステッチが入っているものを指します。
そして就活中は、普段よりもたくさん歩くものです。靴というものは連日同じものを履きつづけるのではなくできれば2足用意し、交互に履いて休ませるようにすると長持ちします。シューケア用品を使ってきちんと磨いて、いつもピカピカに手入れをするのも怠らないようにしてください。
夏の就活スーツに関する疑問
夏の強い日差しや厳しい暑さも関係なく、しなくてはならないのが就活です。夏場に就活スーツを着ていると、他のシーズンとは違う悩みや疑問がたくさん出てくるはず。それらの疑問点をいくつか解説していきます。
夏でもジャケットは着るべきか
クールビズが当たり前の季節、できれば暑苦しいジャケットなんて着たくはないですよね。しかし、結論から言うと「真夏であろうとも、就活はジャケット着用が原則」です。もちろん移動中は熱中症にならないためにも、ジャケットを脱いでかまいません。脱いだジャケットは、バッグに押し込んだりするのは当然タブーで、シワにならないように軽く腕にかけて持ち歩きます。
もちろん採用会場に到着する前には、きちんとジャケットをはおりましょう。暑いとは思いますが、自分の一生を決める大事な場面。ジャケットも着ずに採用試験や面接に挑むのは、社会人になる身として、大きなマナー違反となってしまいます。身だしなみや礼儀の面からも、就活スーツは省略することなく着用してください。
半袖シャツでもいいか
基本的にスーツ姿の際には、長袖のシャツを着るものです。半袖シャツではカジュアルになりすぎます。企業側から「クールビズで」や「半袖シャツでかまいません」などと伝えられる場合がありますが、念のために長袖のシャツを着て、ジャケットは持って向かいましょう。周りのライバルたちがきっちりとジャケットまで着用しているなか、ひとりだけ半袖シャツになってしまう可能性はかなり高いです。大事な場面で大恥をかかないように、念には念を入れてください。
また、ジャケットの下に半袖シャツを着たくなる気持ちはわからなくはないですが、長袖のシャツを着るようにします。スーツを着るときのセオリーのひとつとして、ジャケットの袖口からシャツを1~1.5センチのぞかせるというものがあります。長袖シャツを着ていないとこれができないので、採用担当者に半袖シャツを着ていることを見抜かれてしまいかねません。
肌着も着るべきか
長袖シャツの下に肌着を着ると、よけいに暑くなってしまうと思い込んではいませんか。しかし実は肌着は着用したほうが、夏場のスーツをずっと快適にしてくれるのです。近年、各メーカーから夏用として開発されている「接触冷感」の肌着を着ると、素材に触れた肌が冷たさを感じ、暑さを少しやわらげることができます。また汗かきの人も、肌着を着用するべきです。理由としては、夏用肌着は汗を吸ってすぐに乾いてくれる機能のものが多いから。気になる汗の臭いも、防臭効果のある肌着で防ぐことが可能です。
就活の場で、清潔感に欠けている人物だと受け取られることは大きなマイナスです。シャツやジャケットに汗ジミをつけてしまったり、体臭を気づかれてしまったりしないように気をつけましょう。
夏の就活スーツを選ぶポイント、汗対策
夏場の就活に、ウール素材の分厚いスーツを着ていては暑いのは当たり前です。見た目的にも暑苦しさを感じさせますし、採用会場に行く途中で熱中症になってしまっては元も子もありません。
選ぶ素材で快適性が変わる
夏には、夏用のスーツを着用しましょう。生地の薄さや通気性が段違いなので、暑さがずっとマシになり就活中も楽に過ごせます。就活のためだけに夏用スーツを購入するのは、就活生のお財布には厳しいかもしれません。しかし、日本は6月の梅雨時期から蒸し暑くなるものですし、少なくとも9月くらいまでは残暑が厳しいので、夏用の就活スーツはあったほうが絶対に快適です。どうしてももったいないと感じるならば、就職後の夏場にも着用できるビジネススーツにすることをおすすめします。
汗対策でスマートに
上でも触れましたが、暑がりで汗かきの人ほど夏用の肌着は重要アイテムになります。冷感機能のある肌着を着ているほうが涼しくなるので、採用会場で汗が止まらないなどという事態を回避できます。歩いていると顔の汗がどうしても止まらないくらいに汗かきな人は、ハンディタイプの扇風機も重宝するでしょう。
また、汗には臭いがつきもの。ひんやりするクールタイプのデオドラントシートを持ち歩いて、駅のトイレなどで首もとや脇を拭くとずいぶん涼しくなりますし、汗の臭いも軽減できます。
まとめ
この記事では就活用のスーツと小物類の選び方や、夏場の就活のマナーなどをまとめました。人生を左右するかもしれない、大切なアイテムが就活スーツです。いい加減な選び方は避け、ビジネスマナーに沿ったスーツを購入するようにしましょう。
そして、就活は夏のうちが勝負の時期でもあります。できれば夏用のスーツも用意して、少しでも快適に就活を進めることをおすすめします。就活生にとっていちばん大事な清潔感を醸し出すためにも、夏用スーツやデオドラントグッズは必需品です。
税抜
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August 20, 2020 at 08:07AM
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