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高齢者うつ 精神科こう診てほしい6ヶ条(上田諭) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

 高齢者で気分が落ち込んでゆううつ、やる気が出なくてつらい、食欲が出なくなったなどという症状が続く。このままでは、身体が衰え、弱ってしまう。精神科を受診しよう――そのとき、どういう対応をする精神科ならいいのか。望ましい診療を考えたい。必要な対応をしてくれないとき、医師へのお願いの仕方も掲げた。(入院が必要な重症例は除き、原則外来通院で治療対応できるものを対象とした。)

1.身体的問題のチェックをしてくれる

 まずは、「身体疾患によるうつ」ではないと確認してくれることだ。心の問題以前に、身体的不調があれば当然いつもの元気がなくなり、やる気も低下する。精神科医であっても、一番に身体の問題を疑わなければならない。

 過去の病気(既往歴)を聴きとり、その後の経過、現在の調子を聴く。内服している薬もすべて知る必要がある。最近加わったり変更されたりした薬はないか。身体診療科から開始された薬によって、倦怠感や食欲低下が出ている可能性もある。例えば、ある種の痛み止め(鎮痛薬)はときに眠気・倦怠感、食欲低下・吐き気を催す。

 血液検査もしてもらう。一般的な項目に加えて、甲状腺ホルモンとカルシウム(副甲状腺機能亢進がないかみる)の検査が必要だ。脳血管障害や脳腫瘍がないか、念のため頭部CTは撮ってもらう。

・チェックをしてくれないとき:「身体のことも気になるので、血液検査などもしてくれませんか」とお願いする。

2.症状だけでなく、きっかけを聴いてくれる

 医師はつい、「具合の悪いところ=症状」だけを聴き、その症状に対して投薬し治そうとする。それは適切な医療ではない。注目すべきは、症状の原因である。原因に対する治療がまっとうな治療だ。例えば内科で、高熱という症状を訴える患者に解熱剤を処方し熱が下がっても、治ったことにならない。高熱の原因が何か見つけられていないからだ。肺炎なのか熱中症なのか腎盂腎炎(腎臓の炎症)なのか。原因をみつけ治療を施してこそ、本当の医療である。

 精神科ならなおさらのはずだが、きっかけや経過はそっちのけの「症状に対する投薬治療」が現状少なくない。そういう精神科医は、症状ばかりを聴いて「ではこの薬を」と処方して終了となる。精神科の診察とはいえない。

 どんなきっかけでゆううつになったのか、どういう理由でやる気を失くしたのか、食欲が落ちたのは何があったからか。その後、少しは持ち直したのか、どんどん悪化したのか。いまどのように思っているのか。それを聴いてもらう。

ここで注意は、あまり詳しい話まではしなくてよいことである。あくまで診療に必要な要点だけでよい。細かい事情まで話して「人生相談」をする訳ではない。

・原因を聴いてくれないとき:「うつになったきっかけがあるので、聴いてもらえませんか」と話を持ち出す。

3.現実の悩みでつらいのか、訳もわからずつらいのか

 現実の悩みや出来事の悩みで苦しんでいるのか、悩みは薄れたのに訳もわからずつらいのか、はとても重要な点だ。前者なら「心理性うつ」で現実の悩みによる「心の変調」、後者なら「身体性うつ(うつ病)」で「原因不明の脳の変調」なのである(「高齢者の「身体性うつ」には服薬が必須を参照)。「身体性うつ」では、現実の悩みや出来事はうつの原因ではなく「誘因」に過ぎない。

 高齢者では「身体性うつ」がずっと多いが、その区別は精神科医の仕事である。治療が異なるからだ。「心理性うつ」なら、医師または臨床心理士(カウンセラー)がその悩みをしっかり聴き、必要なら助言や励ましをするのが治療となる。一方「身体性うつ」は、いくら話を聴き生活の助言をしても根本治療にならない。脳の変調を治すには薬物療法が必須だ。「心の病気に薬か」という批判があるが、「身体性うつ」は単なる「心の病気」ではなく、「脳の変調による心の病」なのだ。

 この区別もせずに「うつだから薬を」と言われたら、「なぜ面接でなく薬なのか」の説明をぜひ求めたい。薬を処方することを、当然視する精神科医がまだ多い。「心理性うつ」でもしばしば少量の投薬がされるが、あくまで治療の補助だ。

・この区別を説明されないとき:「このつらさは、悩みのせいですか、それとも悩みとは関係ないうつなのでしょうか」と問いかける。

4.薬をいきなり何種類も処方しない

 うつ病(「身体性うつ」)とわかり薬をもらうとき、まずは1種類の抗うつ薬で十分である。1種類で半数以上の人は改善効果が出る。

 「心配性」すぎる医師がいる。患者から、憂うつだ、不安がいっぱいだ、食欲がない、眠れないと症状をいくつも訴えられると、その医師は症状に一つずつ対応する薬を出そうとする。抗うつ薬だけでなく、抗不安薬、睡眠薬、食欲増進薬と3,4種類が一気に処方されてしまう。まったく不適切だ。症状はすべてうつから派生し、うつが治れば他もほぼ解決する。初回は原則抗うつ薬だけでよい(どうしてもの場合、2種類まで)。錠数も、眠気、吐き気、口の渇き、便秘など副作用の可能性を考えれば、基本は1錠からで十分だ。

 医師が種類や錠数を最初から多く出すのは、早く治したいという心理からだろうか。それは間違いだ。多種出せばよく効くとは限らない。むしろ高齢者は副作用が出やすい。副作用でさらに苦しみを加えることは絶対に避けたい。

・薬を何種類も出そうとされたら:「精神科の薬は初めてなので、まずは1種類から始めてもらえませんか」とお願いする。

5.無理に運動や外出をしなくてよいこと

 周囲の人やかかりつけ医から「運動や外出をしないと余計に病気が悪くなる」と言われ、うつのためにそれができず余計に苦しむ人がいる。

 「心理性うつ」ならば、少し無理しても運動や外出で気分転換をした方が良いことも多い。一方、「身体性うつ」(うつ病)では無理して運動などすることは苦痛と疲れを増すばかりだ。うつ病治療に必要なのは、薬物療法と休息なのである。「動こうという気持ちが出てくるまで、無理して運動や外出はしなくてよい」と保障してあげたい。

 ただ、ずっと横になってばかりでは筋力低下が進む。日中は極力起きて座っていること、1日何回か家の中を少し歩くこと、5分でも体操をすること、を勧めたい。

・運動をするように指示されたら:「無理して運動や外出をしたら、余計につらくなり具合が悪くなります」と真情を告げる。

6.効果がないときは、薬剤増量・入院・電気けいれん療法

 「身体性うつ」に対して抗うつ薬を飲んで1~2週間で改善がみられないなら、薬の増量が必要だ。それでも不変なら、種類を増やすことも検討されるべきだ。同じうつでも薬が効きにくい場合がある。とくに、イライラやそわそわ感が強く身の置きどころがなくなる焦燥型や、「大変な迷惑をかけた」とか「不治の病になった」と思い込んで苦しむ妄想性では、早期に「次の一手」を打たないと希死念慮(死にたい思い)が強まってしまう場合がある。薬の効果が見えなければ、入院治療、さらには入院後の電気けいれん療法も行わなければいけない。電気けいれん療法は数秒間頭部に通電する治療で、麻酔下に安全に配慮して行われ、けいれんは体のごく一部にしか現れない。

・薬を増やすことしかしてくれないとき:「効果が感じられずつらいので、入院と次の治療を考えてくれませんか」とお願いする。

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