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ステイホームでも本格的なリハビリを! オール順天堂が実現させた在宅運動プログラム - juntendo.ac.jp


【順天堂大学】動画2020:「ステイホームでも本格的なリハビリを!オール順天堂が実現させた在宅運動プログラム」(保健医療学部 理学療法学科)


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自宅でできる運動プログラム 特設サイト

多種多様な「症状」や「疾患」から自分に合った運動が選べる!

「自宅でできる運動プログラム」では、疾患領域別リハビリテーション運動の動画が10種類以上掲載され、パソコンやスマートフォンの画面を見ながら自宅でリハビリができるように配慮されています。大学の発信としてはあまり他に例を見ない試みだと思いますが、どのような経緯で制作に着手されたのですか?

髙橋 新型コロナウイルスの感染拡大により、さまざまな病院で「通院を制限している」「訪問リハビリや通所リハビリができない」という状況が続いており、本来なら理学療法士によるリハビリを受けられたはずの患者さんの機能や能力が落ちてしまいがちです。そこで本学科の藤原俊之学科長や高橋哲也副学科長が「自宅でできる運動の動画を配信できないか」と発案し、プログラムづくりがスタートしました。緊急事態宣言発出直後のことです。

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プログラムのHPには、最初に「全疾患共通の体調チェック」の動画があり、続いて該当する「症状」「疾患」を選ぶと適切な運動の動画が表示される仕組みです。「症状」「疾患」には多種多様なものがあると思いますが、どのように選択されましたか?

髙橋 より一般的な疾患を中心に、世の中のニーズを考えて「症状」「疾患」を絞り込んでいきました。視聴者が「自分の症状や疾患に合う運動」を的確に選べるように、「症状」「疾患」をなるべく多く列挙してチェックボックスを設定しています。具体的には「運動器疾患・スポーツ障害チーム」「中枢神経疾患チーム」「内部疾患チーム」の3つのチームに分かれて、それぞれの「症状」「疾患」に対応できる動画制作を進めました。

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相澤 私は関節・筋肉の痛みや動きの悪さなどの運動器障害を専門にしています。運動器障害チームには4名の教員がおり、その中で知恵を出し合ってリハビリの種類を選びました。心がけたのは低負荷であること、そして継続すると効果が出るものを選ぶこと。目の前に患者さんがいらっしゃらない状況のため、誤って必要以上の負荷をかけてしまい、かえって症状が悪化するのを防ぐためです。公開後数週間が経過した時点では、「坐骨神経ストレッチ」のアクセス数が多いという結果が出ました。



山口 私は脳卒中やパーキンソン病などの中枢神経疾患を担当しています。マヒのある方が多いので、転倒リスクが高い方や自力では運動が難しい方に配慮して、運動プログラムを選択しました。さらに、「この運動からしてほしい」「この機能を第一に」と、運動に優先順位をつけました。下肢の運動は大きなエネルギーを使いますし、移動する際に非常に重要です。そのため、下肢の筋力維持、ひいては全身の持久力を維持していただくことに注力し、とくに立ち上がりの運動を最初に選択しました。

齊藤 私は心疾患や呼吸器疾患など、内部障害と呼ばれる分野のリハビリを担当しています。運動することで再発したり増悪したり、あるいは転倒したりすることがないように、安全性には慎重に配慮しました。本当はご家族と一緒に運動していただきたいのですが、新型コロナウイルスの感染リスクの観点から、介助者をつける設定にはできません。おひとりで安全にできて、かつ効果も得られる運動の中から選択しました。

エビデンスとディテールにこだわり、リハビリのプロが作った運動動画

ステイホーム期間中、運動不足を痛感する人が多かったためか、巷では運動の動画があふれていました。こうした一般的な動画と本プログラムの動画の違いを教えていただけますか?

髙橋 エビデンスに基づいていること。リハビリ専門職である理学療法士が作っていること。実施する回数や実施すべきタイミング、得られる効果を動画の中でしっかり伝えていることでしょうか。

相澤 動画の実演はすべて私たち順天堂大学の教員。全員が理学療法のプロフェッショナルですので、一つひとつの動きにもこだわって制作しました。例えば、膝の角度や腰の傾斜角度、どこの筋肉を使う、使わないなど、経験や研究に基づいて実演しています。一般の運動動画では、「この筋肉を使い過ぎると、別の箇所が痛くなる」「この動きだと〇〇をかばってしまう」など、あまりお勧めできない動きをよく見かけます。

齊藤 あえて悪い事例を見せて、「こうならないように」とイメージできるようにもしています。言葉だけでは、なかなか伝わりませんので。

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髙橋 それと、最初に「体調チェック」を設けている動画はあまり見かけませんよね。医学的エビデンスに基づいて、かなり細かなところまで作り込んでいます。

齊藤 「体調チェック」動画は私たち内部疾患チームが制作しました。血圧、脈拍などのほか、体温測定や嗅覚・味覚の確認、倦怠感の確認など、新型コロナウイルスを想定した項目も加えています。

髙橋 内部疾患チームには、体調チェックに続いて呼吸器疾患の運動動画を最初に作っていただき、ここから作業が一気に進みました。



動画制作には苦労されましたか?

山口 「苦労しかなかった」です(笑)。緊急事態宣言下で、私たち教員も全員が在宅勤務。全チーム内に共通認識を醸成するまでが大変で、メールやオンライン会議で何度もディスカッションしましたね。

齊藤 最初の動画は私が絵コンテを描き、チーム内で共有したのですが、細かな部分まではなかなか決めきれません。そこで私が実演し、「こんな角度、こんな画角でどうだろう?」と手探りで決めていきました。数種類撮影してはメンバーに見せ、「こうしたほうがいい」とアドバイスを受けてまた撮り直す、その繰り返しです。この作業に約1か月かかりました。

山口 藤原学科長をはじめ、すべての分野の方に納得していただく動画ができるまでには、かなり忍耐を要しました。動画撮影に関しては、全員初心者に近かったですし(笑)。

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齊藤 それに当初はそれぞれ自前のカメラで撮影していたので、画質もバラバラ。撮影場所や時間帯、その日の天候により、光の質も異なりました。

山口 最終的には学科所有のカメラで「この画角でこう撮ろう」と決めて、そこからは比較的スムーズでしたね。齊藤先生の内部疾患チームが最初にフォーマットを作ってくださったことが大きかったです。

相澤 そうですね。プロトタイプの動画ができるまでが、いちばん苦労しました。それから、やはり1か所に集まってミーティングができなかったことで、細かな改善に時間がかかりましたね。髙橋容子先生がいらっしゃらなかったら、もっと時間がかかったことでしょう。髙橋容子先生が我々の間に入り、意図を整理してHPに落とし込んでくださった。まさに本プログラムの要の存在です。

髙橋 動画編集にあたっては、学内の臨床、研究、教育等の写真・映像の制作を担当する順天堂フォトセンターの方々の助けがありましたし、HP作成にあたっては、文書・広報課や保健医療学部事務室など他部署の方々の助けがありました。学内の迅速な手助けがあったからこそ実現できた「オール順天堂」のプログラムだと思います。

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withコロナ時代にこそ新たな挑戦を!医療や教育の現場で拡がる動画活用の輪

プログラム発表後の反響はいかがですか?

髙橋 アンケート調査を実施したところ、現場の理学療法士の方々からは「役立つ」「助かる」というお声が、患者さんからは「運動して体がラクになった」というお声が届いています。さらに、患者さんや理学療法士から「自分に合う疾患がないので、もっと動画を増やしてほしい」と要望もありますので、今後もニーズに合わせて動画を増やしていく予定です。

齊藤 心臓リハビリをされている病院・施設や高齢者施設、デイサービスなどにアンケート調査をお願いしたところ、ある病院では患者さんの退院時に当HPURLQRコードに変換して渡され、患者さんがご自宅でスマホを見ながら運動を続けられるようにしているとのことでした。また、病棟の壁に当HPのポスターを貼って、ベッドサイドでの運動を推奨しておられる施設もありました。どうやら私たちが想定していた以上に、いろいろな使い方がされているようです。

相澤 学生の遠隔授業にも役立っています。これまでは対面授業が当たり前でしたが、今はコロナ禍でそれができません。しかし、こういう動画があれば、対面なし接触なしでも一定の教育成果が挙げられることがわかりました。今回の経験で、教育者として「これからの時代は動画ツールを当たり前のように作れないといけない」と私も認識が変わりました。同じようなプログラムを他の大学が作ることももちろん可能でしょうが、トップが「やるぞ!」と号令をかけてパッとチームができ、数週間で仕上げられるのは、やはり順天堂大学ならではでしょう。

山口 私は20204月から順天堂大学の教員に就任したのですが、理学療法学科はチームワークが素晴らしいですね! メールを送ると数分後には返答があるのが普通で、一人ひとりの責任感が強い。こうしたチームワークがベースにあったからこそ、短期間でプログラムをご提供できたのだと思います。

齊藤 今後は、当学科の共同研究講座「デジタルヘルス・遠隔医療研究開発講座」とも連携し、遠隔リハビリテーションモニタリングシステムの開発を進めていく計画です。私が携わっているのは、動画を見ながら患者さんに運動していただき、その様子を遠隔地からリアルタイムで見守る新しいリハビリの試みです。このような目的で臨床研究を行っている研究グループは全国でも非常に少なく、患者さんご本人はもちろん、介護者や医療従事者の負担減少にもつながると考えています。

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最後に、HPをご覧になられる方に向けてメッセージをお願いします。

髙橋 今回は医療現場の手が回らないことから、「自分たちにできることを」と始めた取り組みでした。今後も臨床や教育のフィールドの垣根を超えて、患者さんのために理学療法士は何ができるのか考え、学生にも伝えていきたいです。

山口 新型コロナウイルスにより、この社会は今までとは全く異なるものになりましたが、だからこそ新しいものにチャレンジするチャンスでもあります。とくに学生側からの意見では、オンライン講義が好評だったり、通学時間が不要になり自宅で勉強する時間が増えるなど、いいこともあります。変革の時期だからこそ萎縮せずにチャレンジすることが大切だと、今回のプログラムが気づかせてくれました。

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August 19, 2020 at 09:28AM
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