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独自の無線チップ「U1」がもつ知られざる価値:アップルの未来(6) - WIRED.jp

※連載「アップルの未来」の第5回から続く

アップルはこれまで、さまざまな独自のチップを開発しては大々的にアピールしてきた。ところが、2019年9月に「iPhone 11」と同時に発表した新しい「U1」チップについては、特に目立った宣伝をしていない。そしてU1チップがメディアに大きく取り上げられたこともない。その理由のひとつは、U1チップがいまのところ、アップルのローカルファイル共有システムである「AirDrop」でしか使われていない点にある。

だが、iPhoneのように内部空間が限られているデヴァイスにおいて、重要な役割をもたないコンポーネントが新たに搭載されるはずがない。つまりU1チップは、アップルの将来の製品やサーヴィスの中心的な機能を実現する基盤になる可能性があるということだ。

狭い空間で機能する“GPS”的な技術

アップルが独自に手がけたU1は、超広帯域無線(UWB)と呼ばれる無線技術を利用するためのチップだ。アップルはUWBについて、「リヴィングルームほどの空間で機能するGPS」と表現している。UWB技術はWi-Fiに似ているが、基本的に干渉が少ない周波数帯を利用することから、より高いパフォーマンスが期待できる。

また、近くにあるほかのUWB対応デヴァイスに向けて幅広い周波数帯域で高速なパルスを送信することで、そのデヴァイスの位置を正確に特定できる。一般的なBluetoothと比べて、はるかに大量のデータを送信することも可能だ。

UWBは決して新しい技術というわけではない。商業用途や産業用途では、かなり前から利用されてきた。例えば、巨大な倉庫で荷物にタグを付け、その荷物を追跡できるようにした事例がある。また、テレビ局がプロのアスリートのウェアや装具に取り付け、アスリートの位置をリアルタイムでデジタル表示したり、拡張現実(AR)を使ったリプレイ映像に利用したりしている。これに対してU1チップは、一般消費者向けの製品にUWB技術が搭載された初めてのケースだ。

期待できるさまざまな用途

アップルはこのチップを使った長期的なプランについて何も説明していない。だが研究者たちは、UWBにさまざまな用途を見出している。

UWBは当初、大量のファイルを近くのデヴァイスに素早く転送できる手段として売り出されが、鳴かず飛ばずに終わった。ところが、スマートホーム製品や位置ベースのテクノロジーの急速な普及によって、新たな生命が吹き込まれることになったのである。

例えば、UWBを利用すれば、クルマに近づいただけでロックを解除できるシステムを実現できる。ほかの無線技術を使うことも可能だが、UWBはBluetooth Low Energy(Bluetooth LE)などの技術と比べてはるかに精度が高い。このため、人がクルマのどのドアに近づいているのか認識し、そのドアのロックだけ解除するといったことができる。

リーク情報によると、アップルは忘れ物防止タグ「Tile」と競合する製品の発売を計画しているようだ。このタグを大切なものに取り付けておけば、紛失してもアプリを使って見つけ出すことができる。TileではBluetooth LEが使われているが、U1を搭載したスマートフォンと位置情報タグがあれば、もっと正確に場所を突き止められるようになる。

ARで果たす重要な役割

さらにこの技術は、AR分野で重要な基礎的役割を果たすことが研究者によって示されている。アップルは数年前からARに多額の投資を続けており、最高経営責任者(CEO)のティム・クックはARが将来はスマートフォンと同じくらい重要な技術になると確信している、と語っている。

U1チップを利用すれば、ARアプリケーションのなかで、アップルのモバイルデヴァイス同士をいまよりはるかに安定して強力に接続できるようになる。そうなれば、同じAR環境を利用している2人のユーザーのiPhoneが、互いの場所を常に把握できるようになるだろう。しかも転送速度が速いので、これまで実現できなかったような機能が実現可能になる。

アップルが自社の影響力を利用して新しい規格を業界全体に広めようとする試みは、今回が初めてのことではない。過去のこうした取り組みには成功したものもあれば、失敗したものもある。

だが、もし今回の取り組みが軌道に乗れば、アップルはARプラットフォームの開発において、他社にかなりの差をつけることができるだろう。新たなタイプの位置ベースのアプリやスマートホームアプリの人気が高まるなか、競合他社より優位な立場に立てるようになるはずだ。(第7回に続く)

※『WIRED』によるアップルの関連記事はこちら

連載「アップルの未来」

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