東京スカイツリーで、2月から新しいライトアップがスタート。光による表現の幅が大きく広がったのをご存じだろうか? その新しい照明を担当しているのがパナソニックで、300台を超えるLED照明機器を増設。これにより実現した新たな演出や、それを支える技術の詳細が明かされた。その現場を見に、一般では立ち入りできない場所を上ってきた。 【この記事に関する別の画像を見る】 ■上部がフルカラー化、光に“動き”が追加された そもそもスカイツリーのライトアップ増強の取り組みは、訪日外国人旅行客の増加などで注目が高まることを見越し、東武タワースカイツリーが'19年5月から工事を実施してきたもの。「2020年、東京にさらなる輝きを! パワーアップライティング!」をテーマに、照明器具が従来の2,075台から、増設後に2,362台となった。既設照明を60台撤去したため、増設数は347台。 この増強工事により、アンテナ設備が設置された上部の「ゲイン塔」がフルカラーで点灯できるようになったほか、塔体250m付近と150m付近の中間部も連続性のある点灯演出が可能となった。 東京スカイツリーの周辺からの視認性が向上したことに加え、通常ライティングとして行なっている「粋(いき)」「雅(みやび)」「幟(のぼり)」のデザインに、輝きと躍動感あふれる演出や動きを追加。より印象的なライティングデザインへリニューアルしたという。 なお、スカイツリーも他の観光施設などと同様に、新型コロナウイルス感染症の予防/拡大防止のため臨時休業をしていたが、6月1日より時間を短縮して営業を再開している。営業時間は当面の間、9時~21時(最終入場20時)となっており、料金等はチケット販売サイトで確認できる。 ■超広角対応で深い青を出せる新たな照明器具。光り方のプログラムも最適化 ご存知の通り東京スカイツリーの高さは634mだが、増設により全2,362台となったLED照明器具の内訳は、地上から150m付近に72台、250m付近に96台、497mの場所に60台、615mに23台、630mに72台+24台という構成。 結果として、150~250mの部分は暗がりをなくして明るさを向上、497~630mはフルカラー化と明るさのアップ、630mの「ゲイン塔頂部」に輝度光を新設した。 目指したのは、前述した通り旅行客などを含む多くの人がライティングを楽しめるように、「遠景18kmの視認性を向上しながら、近景/中景を印象的なライティングにする」ことだったという。これを実現するため、器具を使った実験や、CGによるシミュレーションを重ねてきた。 近景/中景の検証には、パナソニック独自の光環境シミュレーション技術として、器具による配光の違いや素材による反射率、空間の輝度/照度算出などを用いた「リアルCG」も活用。従来の輝度と比較して検討を進めてきた。 こうしたシミュレーション結果を踏まえ、照明器具については既存のピンスポット配光器具「ダイナシューター」に加え、新たに超広角にも対応した高出力RGBW器具「ダイナペインター」も採用したのがポイント。超狭角7度で漏れ光の少ないスポット光を可能にするダイナシューターと、従来器具比約10倍に明るさを高めた狭角/広角/超広角対応のダイナペインターを適材適所に配灯したことで表現の幅を拡大した。 新設されたダイナペインターは、より深いブルー(ディープブルー)を採用して色の表現領域を拡張。一方で従来器具ダイナシューターは標準的なブルーのため、表現できる領域が異なる。 そこで、動画から読みこんだRGB値から、新設/従来器具が同じ色度になるようにDMX値(照明器具に使われるデジタル信号の通信規格)を決定。両器具の色を合わせるプログラムを新たに開発したのも、今回の色表現を可能にしたことにつながっている。 設置されているダイナシューター/ダイナペインターは、いずれも市販製品をベースにスカイツリー仕様に品質を改良。耐震性や耐雷性、耐電磁波、耐風速を高めているのも特徴。 ■“動き”の演出を強化した方法とは? 演出の手法として大きな特徴は、演出プログラムの作成方法の刷新。一般的なライトアップは、カラーパレットから各器具の色を選択して1台ごとにRGBそれぞれの値を入力して演出を作成するという。そのため、“動き”の演出には対応しにくい点が課題とされる。 一方で、今回は演出プログラムに「ピクセルマッピング」を採用。動画からRGB値を抽出し、動き/色/光の強さを決定してRGBから自動的にRGBW(新設器具)/RGBB(既設器具)の4ch制御に変換する。ピクセルマッピングで動きのある演出を実現し、新開発のプログラムで従来器具と新器具のカラーマッチングを可能にした。 ■497mの高所に上って見てきた。東京の夜の新たな一面を発見 説明の終了後、実際にスカイツリーの照明設置現場へ移動。497mという高所に設置された器具を見てきた。ヘルメットや反射ベスト、安全帯などの装備をした上で、業務用エレベーターで上がった後、細く急な階段をいくつも上って現場に向かった。 高所が苦手な筆者は、下を見るとイヤな想像をしてしまうので、途中でいろいろ考えるのをやめ、ただ手すりをしっかり握って足を交互に動かすことだけを意識しながら上り続けて、到着。 足場は網状のため下の家並みが見えて、風も多少吹いていたので不安もあったが、大きく揺れたりすることはなく、設置された照明器具を見ることができた。 展望デッキなど一般公開されている場所とは全く違う雰囲気の場所だったが、こうした所に設置された照明の一つ一つが連携して、全体で美しいライトアップにつながっていると思うと、これまで何気なく見ていたスカイツリーの新たな一面を知ったようにも感じる。階段の上り下りの大変さも実感したことで、ここより高い630mの位置まで上って普段点検しているという作業担当者の皆さんにも頭が下がる思いがした。 従来のライトアップは、通常ライティングの開始前に、照明機器を最大限に近い明度で白色に点灯し、輝くように明滅する交点照明と、展望台の赤がアクセントとなるシンプルな演出だったという。今回の刷新により、新たにゲイン塔と250m付近、150m付近に虹色を加えた色鮮やかな点灯演出が追加された。 さらに、消灯後の演出としては、毎日24時~翌朝6時にかけて、時計光だけでなく、月ごとの誕生石をイメージした色でゲイン塔の頂部を点灯。天望デッキより下の塔体部分の交点照明に動きのある演出を行なっているという。 今の時期は、まだ遠くへ出かけることを控えている人も少なくないと思うが、外からでも眺められるスカイツリーの新しいライトアップを見て、東京の夜の新たな一面を楽しんでみるのも良いかもしれない。
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June 11, 2020 at 07:00AM
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スカイツリーが“躍動感あるライトアップ”に。高さ497mの現場で見た新しい照明の仕組み(Impress Watch) - Yahoo!ニュース
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