第三次ブームを経て、ようやくいちジャンルとして定着した感じのある「クラフトビール」。
そこで新たにビアギークやアウトドア好きの間で注目され始めているのが、ビール用のテイクアウト容器「グロウラー」だ。
注ぎたての冷たさと炭酸を保持できるのが最大の特徴で、店によってはビールを安価でテイクアウトできるのも魅力の一つ。
……とはいえこのグロウラーの素晴らしさは、まだまだ一般的に広く知られているとは言い難い。それならば専門メーカーにご協力いただき、そのポテンシャルをたっぷりと掘り下げてみようじゃないか!
グロウラーの魅力に迫る
一概にグロウラーと言っても性能はそれぞれ。缶や瓶など水筒のような一時的にしか炭酸や冷たさを保つことができない簡易的な商品から、さながらビールサーバーのように約1カ月もの間、品質を保てるものまで多岐に渡る。
そんな中、10年以上前からビールのテイクアウトが一般的なものとして行われているアメリカ国内で、ここ数年で売り上げを伸ばしているのが、スタンレー社の「クラシック真空グロウラー」。
1.9Lでも税込8,000円台と、他社製品(同サイズでは1万円を超えるものがほとんど)に比べてずいぶんとリーズナブルなのだ。
▲ハンマートーンが特徴なスタンレーのクラシックシリーズ。右から3つ目の商品がグロウラー
そこで、スタンレー社の製品を輸入販売する株式会社ビッグウイングに、グロウラーのメリットを伺った。
▲インタビューにお答えいただいた同社広報の山本浩紀さん
同社では、2016年からスタンレーのグロウラーを取り扱いを始めたという。
なおスタンレーは、アメリカのブルーワーカーがいつでも温かいコーヒーが飲めようにと、現在まで続く主力商品「真空スチールボトル」の原型を100年以上前に開発した、いわば“魔法瓶のパイオニア”的ブランドでもある。
▲「クラシック真空グロウラー」(写真左:1L/7,150円、写真右:1.9L/8,800円)
──まずは、スタンレー社のグロウラーの特徴を教えてください。
山本さん:最大の特徴は、「掛金」が付いたスクリューキャップ仕様となっている点です。
──普通のボトルとは何が違うのでしょうか?
山本さん:同社の製品には、温かい飲み物に適した「クラシック真空ボトル」というものもありますが、炭酸と蒸気ではかかる内圧が違うんですよ。
炭酸は上方向へ抜けるという特性があるため、より内圧を抑え込む力が強い掛金タイプのキャップを採用することで、炭酸を長くキープできるんですね。
▲バチンとしっかり締まる
──1.9Lの場合、8,360円のボトルに対してグロウラーは8,800円と、たった440円の違いですが、ここまで性能に差をつけられるのですね。
山本さん:この掛金に使われている技術がすごいようで、本来なら3倍近い価格で販売されていてもおかしくありません。
▲クラシック真空ボトル(写真左:1L/6,600円、写真右:1.9L/8,360円)
もちろんグロウラーは真空断熱構造なので、保冷と同等に保温効果もあるのだが、先ほど述べたように炭酸と蒸気とではかかる圧力に違いがある。
「開けた時に吹きこぼれの原因にもなるので、温かい飲み物は入れないように」とのことだ。
ボトルの中でカクテルも作れる
▲大きめのグリップで、持ちやすい
──スペック情報によると、24時間以内であれば10度以下をキープできるとのことですが、開閉回数や外気温の影響によって保冷効力は変わってくるのでしょうか?
山本さん:おっしゃる通り、使い方や環境によって保冷温度は変わってきます。長時間保冷と炭酸を保ち続けたい時は、開閉を最低限にするのが良いと思います。
実際に朝コーラを入れて出勤し、ほとんど開閉せずにおいたところ、半日後も美味しく飲めるレベルの炭酸と温度を維持できていました。
▲「コップに注いでも良いですが、口にあたる部分がなめらかなので直飲みもOKです。……僕はあまりしませんが(笑)」(山本さん)
容量は1Lでも、1~2人分ならちょうど良さそうだ。「もう少し容量が欲しい」という声もありそうだが、テイストの違うビールを持ち寄って飲み比べをするというのも楽しみ方の一つだろう。
また、氷も2日程度なら溶けずに維持できるため、氷だけをボトルに入れて持ち運ぶのもおすすめ。
さらに、1:1の割合でビールとトマトジュースを入れてレッドアイにしたり、ジンジャーエールを入れてシャンディガフにして持ち運ぶことも。ということは、ウィスキーと炭酸水を入れれば、好みの濃さのハイボールだって持ち歩けるということになる!
災害時にグロウラーを活用するユーザーも
──お酒を入れる他には、どんな活用例がありますか?
山本さん:中には、断水に備えてグロウラーに新鮮な水をストックした、というお客様もいらっしゃいましたね。
──飲み物を外気に触れさせず新鮮なまま保てるというのは、災害時においても大きなメリットですね。
山本さん:様々な使い方でご愛用いただいています。ちなみに、アメリカでは購入者のほとんどを男性ユーザーが占めていますが、日本では購入者の男女比は6:4と、女性からの支持も厚いんですよ。
デザインとしては無骨さや力強さが反映されているものの、女性からは「かわいい」と評価を受けていますね。
確かに写真で見るとゴツい印象があるのだが、実物を目にすると無骨さの中にもデザインの洗練具合が見て取れる。ブランドを象徴する「ハンマートーングリーン」のカラーもちょっとレトロで、使わないときはインテリアとしても映えそうだ。
▲空前のビールブームで関連商品の売り上げも上々。こちらは「スタッキング真空パイント」(2,750円/1個)
──「グロウラー」という製品がビアギークの間で知られ始めたのも、ここ数年のことですよね。この先、普及させていくための戦略を教えてください。
山本さん:近々ビールのイベントの開催を計画しています。グロウラーを貸し出して、実際に製品を使ってその魅力を知っていただく機会を、どんどん増やしていきたいですね。
ちなみに、東京都内にはグロウラーの販売・ビールの量り売りに対応したビアバーも。有名なところでは下北沢の「TAP&GROWLER」や恵比寿の「Liquor Shop NIGHT OWL」、下板橋の「Tokyo Aleworks Taproom」などがある。
▲これ持ってビール買いに行くのって、なんかツウっぽくて良いよね
ただ、クラフトビールを販売している店舗やマイクロブルワリーの中には、専用のグロウラーを持参すればテイクアウトOKとするお店もあるそう。
クラフトビールといえば法律や税務上、少々管理が厳しいのだが、実はお客さんが持ち込んだ容器によるビールの量り売りは「(酒類販売業者が)酒類の販売業免許を有していれば、手続き等は必要でない」とのこと。
スタンレーにも、「クラシック真空グロウラー」を置いて販売したいという問い合わせが最近増えているそうだ。
自宅で24時間検証スタート
グロウラーがこれからもっと一般的になってほしいと、ビール好きの筆者は願うが、そのためにも本当に炭酸は抜けないのかということを調べてみなくてはならない。
ということで、今回は国内大手メーカーのラガーの生ビール(500m缶×2本)を用意して検証してみた。
▲「クラシック真空グロウラー(1L)」をお借りした
室温はだいたい21度くらいをキープ。真空構造のため泡が出やすいので、注ぐときはボトルを寝かせるように傾けて、ゆっくり注ぐのがポイントだ。
▲ギリギリまで入れたので蓋をする時にはすでに圧がかかっており、グッと抑えながら閉めた
・・・
……あれやこれやといううち、12時間はあっという間に経つものだ。
さて、待ちに待った開封の儀。いざ、と意気込みつつ開けてみると、「ボンッ」と予想以上の衝撃があり、かなりの内圧がかかっていたことがわかった。
▲缶から開けて12時間も経っているとは思えないクオリティー
注いだところ、シュワシュワと炭酸の音がして、泡もしっかり作れた。飲んでみると、ちゃんと冷たい! 冷蔵庫の中で冷やした状態を10とするなら、8.5~9くらいの感覚だろうか。普通に冷たくておいしい。
炭酸にいたっては、抜けたようにはほとんど感じられなかった。大抵の人は注いでから12時間以内に飲み切るはずなので、快適に使用できるのではないだろうか。
探究心が芽生えてきたので、さらに12時間置いた24時間後の味も確かめてみることに。
・・・
……炭酸も冷たさも合格! 泡もちゃんと残っていて、冷たさもまずまず。イギリスビールのような温度感と微炭酸といった印象で、個人的にはまったく問題ないレベルで飲めた。
クラフトビールならば、さらにフレーバーなどの要素もあるので、なおさら違和感なく飲めるのではないだろうか。
▲500ml缶2本、ほぼ全量が入った
結果としては、まったく炭酸が抜けないと言うわけではないが、限りなく抜けにくいのは確かだ。12時間以内であれば、ほぼ注ぎたてと遜色ないレベルで楽しめる。
筆者は現在子育て中のため、外でビールを飲む機会はほとんどないのだが、家にグロウラーがあれば、子どもが帰ってくるまでに好みのクラフトビールをテイクアウトしておけば良い。
なぜなら、1日の家事育児がすべて終わった後でも冷たく、味の状態も良いままなのだから。これは疲れが吹っ飛ぶうれしさだ。
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March 13, 2020 at 07:00AM
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ビールの炭酸&冷たさを24時間キープする「グロウラー」は、一家に一台あって絶対に損しない - メシ通
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